本を書くときに、プリントアウトを活用する話
本を書くときに、プリントアウトを活用する話
先日、いったん編集部に本の原稿を送ってからも、原稿の修正は続いています。ずっと続いています。そこでは、いったん全部の原稿を紙にプリントアウトして、赤ペンで気になる箇所や修正点等をメモして、それを読んでファイルに反映する作業をしています。
いったんプリントアウトを経由するというのは、一見無駄な作業のようですけれど、そうでもないみたいですね。
どうしてかというと、一つ一つの作業にはそれなりに時間がかかるからです。いったん1つのチャプターをざっと読んでおき、気になるところに赤ペンで印をつけておき、後日その一つ一つの赤ペンの箇所を詳しく検討してファイルに反映する。そういう流れがいいのです。
細かい誤字脱字の修正ならばいざ知らず、多少前後関係を見たり、内容を詳しく考えたりする種類の修正の場合には、特にプリントアウトは重要です。言い換えると、ぱっと見て瞬間的に直せるような種類じゃないものに関してはプリントアウトが役に立つということです。
それはある種の時間のコントロールといえます。プリントアウトして赤ペンを入れるという作業をある程度のスピード感でこなす。そしてその後、一つ一つのポイントに関してじっくり考えて直す。これは作業をコントロールしているわけですけれど、自分の思考を何かに向けている時間を制御していると考えることもできるでしょう。
プリントアウトすることのもう一つのメリットは、分量を実感できるということです。プリントアウトして、赤ペンを入れた紙が机の上に積んでありますので、一目で「残り作業の分量」がわかることになります。これはモチベーションアップに役立ちますね。
それから作業をしている途中で「これは後ほど検討する」のような処理が必要になることもありますが、そのときにはそのページにポストイットを貼って、別の山として積んでおくこともできます。これもまた作業をする上で役に立ちますね。
メインの山を崩すことにくたびれてきたときには、気分をちょっと変えてそちらの別の山に取り組むということができるからです。これもまた、作業のコントロールであるとともに、自分の時間のコントロールとも言えるでしょう。
プリントアウトの紙には、少し厚手の紙を使っています。これは、プリンタの熱でカールすることを防ぐという実際的な理由があるのですが、裏紙をメモに使うことができるという別のメリットも生まれました。これは今週のメールマガジンにも書いた話ですね。いや、先週だったかな。
実際のところ、今はちょうどたくさんプリントアウトしてたくさん修正を入れているところなので、裏紙のメモ用紙はだぶつき気味ですね。
先ほど、時間のコントロールと表現しましたが、これは意外と深い意味を持っています。ゆっくり読むことと、早く読むことは随分違うからです。
自分が書いた文章をじっくり読んで、細かいところまで誤りがないかどうかを確かめることは大切です。でもそれと同時に、自分の書いた文章を素早く読んで、誤解がないかどうかを調べることも大切です。つまりそれは、読むのにかける時間を制御する(変化させる)ということです。
じっくり読めば誤解がないというのは、もちろん悪いことではありませんけれど、じっくり読まなければ誤解してしまうというのは困るわけです。そしてそれを確かめる良い方法の1つは自分が素早く読んでみることです。
先程の話の繰り返しになりますが、コンピューターのキーボードに向かって見ている側から修正していくとなると、全体を読むスピードはどうしても落ちてしまいます。そうすると、素早く読んだときにどう感じるかということのテストにはなりません。その意味でも、プリントアウトを活用することは大切だと思いますね。
ここで大事なのは、プリントアウトが絶対だと言っているわけではないという点です。プリントアウトは、自分が読むスピード(読むときにかける時間)を制御するためのツールなのです。ですから、PDFにしてiPhoneで読んだり、コンピューターのディスプレイで読んだり、あるいはまたプリントアウトした紙で読んだり。そのような多様な読み方を必要に応じて使い分けることが大切なのだと思っています。
この他の多様な読み方については『数学文章作法』にも書きました。
https://www.hyuki.com/mw/
#結城浩のひとりごと
先日、いったん編集部に本の原稿を送ってからも、原稿の修正は続いています。ずっと続いています。そこでは、いったん全部の原稿を紙にプリントアウトして、赤ペンで気になる箇所や修正点等をメモして、それを読んでファイルに反映する作業をしています。
いったんプリントアウトを経由するというのは、一見無駄な作業のようですけれど、そうでもないみたいですね。
どうしてかというと、一つ一つの作業にはそれなりに時間がかかるからです。いったん1つのチャプターをざっと読んでおき、気になるところに赤ペンで印をつけておき、後日その一つ一つの赤ペンの箇所を詳しく検討してファイルに反映する。そういう流れがいいのです。
細かい誤字脱字の修正ならばいざ知らず、多少前後関係を見たり、内容を詳しく考えたりする種類の修正の場合には、特にプリントアウトは重要です。言い換えると、ぱっと見て瞬間的に直せるような種類じゃないものに関してはプリントアウトが役に立つということです。
それはある種の時間のコントロールといえます。プリントアウトして赤ペンを入れるという作業をある程度のスピード感でこなす。そしてその後、一つ一つのポイントに関してじっくり考えて直す。これは作業をコントロールしているわけですけれど、自分の思考を何かに向けている時間を制御していると考えることもできるでしょう。
プリントアウトすることのもう一つのメリットは、分量を実感できるということです。プリントアウトして、赤ペンを入れた紙が机の上に積んでありますので、一目で「残り作業の分量」がわかることになります。これはモチベーションアップに役立ちますね。
それから作業をしている途中で「これは後ほど検討する」のような処理が必要になることもありますが、そのときにはそのページにポストイットを貼って、別の山として積んでおくこともできます。これもまた作業をする上で役に立ちますね。
メインの山を崩すことにくたびれてきたときには、気分をちょっと変えてそちらの別の山に取り組むということができるからです。これもまた、作業のコントロールであるとともに、自分の時間のコントロールとも言えるでしょう。
プリントアウトの紙には、少し厚手の紙を使っています。これは、プリンタの熱でカールすることを防ぐという実際的な理由があるのですが、裏紙をメモに使うことができるという別のメリットも生まれました。これは今週のメールマガジンにも書いた話ですね。いや、先週だったかな。
実際のところ、今はちょうどたくさんプリントアウトしてたくさん修正を入れているところなので、裏紙のメモ用紙はだぶつき気味ですね。
先ほど、時間のコントロールと表現しましたが、これは意外と深い意味を持っています。ゆっくり読むことと、早く読むことは随分違うからです。
自分が書いた文章をじっくり読んで、細かいところまで誤りがないかどうかを確かめることは大切です。でもそれと同時に、自分の書いた文章を素早く読んで、誤解がないかどうかを調べることも大切です。つまりそれは、読むのにかける時間を制御する(変化させる)ということです。
じっくり読めば誤解がないというのは、もちろん悪いことではありませんけれど、じっくり読まなければ誤解してしまうというのは困るわけです。そしてそれを確かめる良い方法の1つは自分が素早く読んでみることです。
先程の話の繰り返しになりますが、コンピューターのキーボードに向かって見ている側から修正していくとなると、全体を読むスピードはどうしても落ちてしまいます。そうすると、素早く読んだときにどう感じるかということのテストにはなりません。その意味でも、プリントアウトを活用することは大切だと思いますね。
ここで大事なのは、プリントアウトが絶対だと言っているわけではないという点です。プリントアウトは、自分が読むスピード(読むときにかける時間)を制御するためのツールなのです。ですから、PDFにしてiPhoneで読んだり、コンピューターのディスプレイで読んだり、あるいはまたプリントアウトした紙で読んだり。そのような多様な読み方を必要に応じて使い分けることが大切なのだと思っています。
この他の多様な読み方については『数学文章作法』にも書きました。
https://www.hyuki.com/mw/
#結城浩のひとりごと
この文章は、音声入力を利用して結城浩のマストドンに投稿したものです。